写真:開発を担当した東京国立近代美術館MOMATコレクション「プレイバック『日米抽象美術展』(1955)」3Dウォークスルー(展示名:再現VR)展示の様子

1992年よりメディア表現研究に従事し、コンテンツ制作者の立場で研究成果を実装する取り組みを行う。2022年以降は、XR(クロスリアリティ)、CG(コンピューターグラフィックス)、高精細映像等、先端技術におけるメディア表現研究を主とする。放送、インターネット、イベント、公共施設等、様々な環境において研鑽を重ねている。

先端技術を利活用したメディア表現研究

現代アーティスト支援のためのXR表現研究

・研究期間
2024年‒2026年
・所属
独立行政法人国立美術館国立アートリサーチセンター
・概要
所属機関における現代アーティストへの様々な支援事業に付帯する形で、デジタル技術を用いたアーティスト支援を新規事業として提案し、研究に結び付いた取り組みである。本研究のテーマは、特定の空間全体を作品として体感できる現代美術(主にインスタレーション作品)におけるXR技術を用いたインタラクティブアーカイブ構築である。現代アーティストの寺内曜子1氏に研究参加を依頼し、2024釜山ビエンナーレ出展作品《One is Many Many is One》《パンゲア》のインタラクティブアーカイブ(写真)を開発した。フォトグラメトリー2、ニューラルラディアンスフィールド3等を用いて同作品を仮想空間上に再現し、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)をはじめとする複数のディバイスで鑑賞可能なVRアプリケーションを制作した。
テクニカルスキル
空間設計、CGデザイン、フォトグラメトリー、ニューラルラディアンスフィールド 、プログラミング言語(C#)
・開発環境
Windows 11
・使用ツール
Unity、Blender、Adobe Creative Cloud、3DF Zephyr
・成果
所属機関の研究紀要に本研究が掲載4

美術館におけるイマーシブ表現研究

・研究期間
2024年‒2026年
・所属
独立行政法人国立美術館国立アートリサーチセンター
・概要
国立美術館各館のデジタルコンテンツ制作支援を担当し、各館の企画においてイマーシブ(没入型)表現の研究を行った。映像領域と音響領域それぞれにおいて研究を行い、映像については大型スクリーン投影、音響については立体音響をテーマとした。大型スクリーン投影については、東京国立近代美術館所蔵作品である横山大観《生々流転》のデジタルサイネージとプロジェクションマッピング(写真)のパイロット版を制作した。40mの画巻である同作品を横スクロール形式にてインタラクティブ表現を実装した。諸事情により、高精細動画の公開のみとなっている5。立体音響については、国立西洋美術館の展覧会「内藤コレクション 写本—いとも優雅なる中世の小宇宙」に関連した声楽動画企画にて、バイノーラル録音による立体音響動画コンテンツ『国立西洋美術館 内藤コレクション—記譜写本を歌う』を開発した。
・テクニカルスキル
(映像領域)空間設計、CGデザイン、プロジェクションマッピング、プログラミング言語(C#)
(音響領域)音響(アンビソニックス等)、撮影、編集
・開発環境
Windows 11
・使用ツール
(映像領域)Unity、Mad Mapper
(音響領域)Adobe Creative Cloud、Zoom H3-VR
・開発協力
(音響領域)なごみ研究所
・成果
国立美術館初となる内製によるイマーシブコンテンツを公開(『国立西洋美術館 内藤コレクション—記譜写本を歌う』6

美術館におけるXR表現研究

・研究期間
2022年‒2024年
・所属
独立行政法人国立美術館国立アートリサーチセンター
・概要
文化庁が推進するミュージアムDXに関連した展示企画が東京国立近代美術館にて企画され、XR分野の研究開発を担当する事となった。本研究は、現存しない同館旧館の展示フロアを仮想空間上に再構築し、当時開催された展覧会をXR技術にて再現するものである。展覧会の配置図と数点の写真資料からレイアウトを作成し、AIの写真解析による建築物の計測とテクスチャ生成を活用する再現手法をとった。1953–1954年に開催された「抽象と幻想」展(写真)と1955年に開催された「日米抽象美術展」をそれぞれ3DCGにて再現し、スクリーン投影用途とHMD用途にてVRアプリケーションを開発した。
・テクニカルスキル
空間設計、CGデザイン、モーショングラフィックスデザイン、映像編集、ニューラルネットワーク、プログラミング言語(C#)
・開発環境
Windows 11
・使用ツール
Unity、Blender、Adobe Creative Cloud
・成果
国立美術館初となる内製によるVRアプリケーション開発7、日本展示学会『展示学65』にて掲載8

インターネットにおけるインタラクティブ表現研究

・研究期間
2003年‒2005年
・所属
株式会社フジテレビジョン
・概要
2003年当時、日本におけるインターネット人口普及率(個人)が60.6%、世帯普及率は88.1%に達し9、ブロードバンドが急速に普及、リッチコンテンツ(幅広い表現が可能なコンテンツの総称)の需要が急速に高まった。本研究のテーマは、リッチコンテンツにおけるインタラクティブ表現の探求である。ウェブサイト「フジテレビ公式ホームページ」におけるプロモーションツールとして、各種のインタラクティブコンテンツを企画し、ベクターデータによるアニメーション、ゲームコンテンツ、Web3D等の開発を多数行った。当時、先端技術を有していた Macromedia, Inc(現 Adobe Inc.)の開発ツールを用いてコンテンツ制作を行い、ドラマやスポーツ番組の公式サイトにおいて、インタラクティブアニメーションやオンラインゲームを実装した。
・テクニカルスキル
CGデザイン、Webデザイン、グラフィックデザイン、モーショングラフィックスデザイン、スクリプト言語(ActionScript・JavaScript・Lingo・Perl)
・開発環境
Windows2000
・使用ツール
Macromedia Dreamweaver・Flash・Shockwave3D、Softimage3D、MAYA
成果
Web of the Year 2003‒2005メディア部門賞(「フジテレビ公式ホームページ」)10
Web of the Year 2005 話題賞2位(「『電車男』公式サイト」)
贈賞理由:「Yahoo! Internet Guide」誌(ソフトバンククリエイティブ社発行)の人気投票による選考結果

テレビ放送におけるインタラクティブ表現研究

・研究期間
(第1期)1996年‒2002年
(第2期)2014年‒2016年
・所属
(第1期)株式会社フジテレビジョン
(第2期)スカパーJSAT株式会社
・概要
テレビ放送におけるリアルタイムCG技術の導入期(第1期)と成熟期(第2期)それぞれにおいて映像表現の研究開発を行った。第1期における研究は、実物の美術セットに係るコストを改善するためのバーチャルスタジオ開発が主となり、具体的には、テレビ番組『Flyer TV』11『FNNスーパーニュース』12等にて研究開発を行った。リアルタイムで変化する仮想空間と、演者のアクションに即応するアセット表現を多数担当した。第2期における研究は、リアルタイムで生成したデジタルエフェクトを全編に用いたテレビ放送の開発である。松本零士原作『銀河鉄道999』を先端技術を駆使して生放送ドラマ化するという取り組み13において、バーチャルスタジオとモーションキャプチャ用いた大規模な表現研究を行い、仮想空間上に構築した敵役の機械伯爵が待ち受ける時間城にて、主人公の鉄郎が放つレーザー光線をインタラクティブVFXにて表現する等、多彩な映像表現を生放送形式にて実現した。本研究では、演者の動きに合わせて各種のエフェクト生成するためのシステムを独自に開発した。
・テクニカルスキル
(第1期)セットデザイン、CGデザイン
(第2期)コンセプトデザイン、VFXスーパーバイズ
・開発環境
(第1期)IRIX / Silicon Graphics Onyx
(第2期)Windows 10
・使用ツール
(第1期)Softimage3D、MAYA、Brainstorm(3Dリアルタイムグラフィックスソフトウェア)
(第2期)Vizrt (リアルタイムグラフィックスシステム)、VICON(モーションキャプチャ)
・開発協力
(第2期)ピクチャーエレメント、白組
成果
(第1期)民放キー局初の帯番組運用となるバーチャルスタジオを開発(『FNNスーパーニュース』)
(第2期)全編にインタラクティブCGを用いた生放送ドラマを開発(『銀河鉄道999 Galaxy Live Drama』)

テレビ放送におけるCG表現研究

・研究期間
1992年‒2002年
・所属
株式会社フジテレビジョン
・概要
1993年当時、映画『ジュラシック・パーク』を起点としたCGブームにより、番組制作におけるCGの需要が急増し、所属会社にて高度なデジタル映像を実現するためのCG内製プロジェクトが本格化した。本研究のテーマは、テレビ放送における実写とCGの融合を主とした高度なデジタル映像表現である。本研究のために、ハリウッドのポストプロダクション14にて3Dマッチムーブやモーションキャプチャ等の先端技術を習得。テレビ番組『SMAP×SMAP』にて、セットデザイン、3DCGアニメーション、VFX(視覚効果)等、アナログ技術とデジタル技術の併用にて、フォトリアリスティックな映像表現を探求した。また、リップシンクシステム等のリアルタイムレンダリングに関連したアプリケーションを独自に開発し、各種のプロジェクトに応用する取り組み15を行った。
・テクニカルスキル
セットデザイン、CGデザイン、CGアニメーション、3Dマッチムーブ、モーションキャプチャ
・開発環境
IRIX / Silicon Graphics Indy・Indigo・O2・Octane
・使用ツール
Lightwave、Softimage3D、MAYA、RenderMan、boujou(3Dマッチムーブ)、VICON(モーションキャプチャ)、Discreet Flame(コンポジット)
・成果
第1回文化庁メディア芸術祭優秀賞16(『SMAP×SMAP』)
贈賞理由:視聴者が違和感なく映像に飛び込める楽しさを演出する技術と感性に対して

マスコミュニケーションにおけるメディア表現研究

地上波放送におけるタイムテーブル研究

・研究期間
2008年‒2014年
・所属
株式会社フジテレビジョン
・職務
テレビプロデューサー
・概要
地上波放送タイムテーブル(編成)は、番組を放送してCM枠を売るビジネスモデルの動脈とされている。本研究のテーマは、視聴率の最大化を目的とした新たなタイムテーブルの創出である。タイムテーブル作成は番組の定着を目論むと同時に、新たな切り口で視聴動向を探求するミッションがある。本研究においては、短期間(単発・1 クール)でKGI・KPIの目標設定が可能なドラマ枠を企画開発のベースとし、タイムテーブルとコンテンツの組合せ最適化の研究を行った。特記すべき開発例として、月間で人気作家の特集を組むという取り組みがある。1つの原作を連日放送する編成手法は民放キー局各社にて行われてきたが、複数週連続で一か月パッケージングするという手法はなかった。パッケージのアイコンとして当時人気の頂点にあった東野圭吾作品に着目し、手つかずの初期作にスポットを当て、複数週連続編成するプロジェクトを立ち上げた。
・成果
株式会社フジテレビジョン編成局長褒賞奨励賞『東野圭吾3週連続ドラマスペシャル』17(2011年)
贈賞理由:高視聴率及び編成における新たなスタンダードを創出した功績に対して
・影響
現在に至るまで、本研究の成果が民放キー局のタイムテーブルにて継続されている(例:日本テレビ放送網株式会社のジブリ作品の複数週連続編成等)

衛星波放送におけるタイムテーブル研究

・研究期間
2006年‒2008年
・所属
株式会社フジテレビジョン
・職務
テレビプロデューサー、CS放送開局統括(特命)
・概要
2006年当時、衛星波放送はテレビ局の新たな収入源として期待され、特に有料CS放送の業績は右肩上がりであり、ハイビジョン化によってより高い収益が望まれていた。本研究のテーマは、ハイビジョンCS放送チャンネル「フジテレビCSHD」開局における、加入者の最大化を目的とするタイムテーブルの創出である。研究手法として、既存のCSチャンネルからハイビジョンに転換可能なコンテンツを精査し、それらをサイマル放送(同一時間帯に同じ番組を複数の異なるチャンネルで放送する事)するタイムテーブルの土台を構築。サイマル以外の枠に別途調達した番組を振り分けて効果測定を行った。具体的には、高画質化の要望が高いスポーツ中継等を中心にサイマルし、その他の枠を地上波やレンタルビデオチェーンで目にする機会の少ないレアなコンテンツを編成。それらの視聴動向に基づいて中長期(5か年・10か年)のコンテンツマーケティング計画を策定した。
・成果
民放キー局主体でのCSによる初のハイビジョン放送チャンネルの開局と後継チャンネルの基盤構築(2008年)
・影響
後継チャンネル「フジテレビNEXT」がCS放送のトップチャンネルとして運営を維持している

インターネットにおけるビジネスモデル研究

・研究期間
2003年‒2005年
・所属
株式会社フジテレビジョン
・職務
クリエイティブディレクター
・概要
2003年当時、インターネット広告が1,000億円を突破、ブロードバンドの急速な普及で専用プレイヤーを使った動画コンテンツのストリーミング配信が次々に立ち上がり、マスコミ各社において動画配信のビジネスモデルに関心が集まっていた。本研究のテーマは、地上波広告モデルをインターネット上で展開するビジネスモデルの創出である。具体的には、オリジナル動画コンテンツに地上波と同じ形でコマーシャル映像を挿入し、スポンサーサイトの同時閲覧も可能とするものである。PV数やクリック数等、視聴率よりも精緻なデータが得られるメリットがある反面、本業の収益に影響を及ぼす可能性があり、営業セクションとの調整が難航したが、あくまでもプロトタイプという位置づけにて実現可能となった。スポンサーが本田技研工業株式会社に決定。当時同社のアイコンでもあったASIMOを想起させるオリジナルCGアニメーションを調達し、「CX Digix」(シーエックス・デジックス)というオリジナルブランドを立ち上げ、民放キー局において初の試みとなるスポンサード動画配信事業を実現した。
・成果
民放キー局初のスポンサード動画配信事業の実現(2003年)
・影響
本件は先進的な事業として各種メディアに取り上げられ18、YouTubeがローンチする2005年頃まで継続した


  1. アーティストの国際発信支援プログラム 【Artist Talk #5】 寺内曜子(国立アートリサーチセンター公式ホームページ) ↩︎
  2. 被写体を様々な角度から撮影した複数の写真をコンピュータ解析にて立体的な3Dモデルを生成する技術(写真測量法序論 – ウィーン大学) ↩︎
  3. 複数の2次元画像から高精細な3次元空間を再構築するAI技術(知っておきたいキーワード ニューラルラディアンスフィールド) ↩︎
  4. 令和6 年度 国立アートリサーチセンター活動報告・研究紀要 pp.85-93(国立アートリサーチセンター公式ホームページ) ↩︎
  5. 4K映像 横山大観《生々流転》1923年(重要文化財)(東京国立近代美術館公式ホームページ) ↩︎
  6. 『国立西洋美術館 内藤コレクション—記譜写本を歌う』(国立西洋美術館公式Youtubeチャンネル) ↩︎
  7. デジタル技術を用いた鑑賞体験の実現 「プレイバック「抽象と幻想」展 (1953–1954)」(国立アートリサーチセンター公式ホームページ) ↩︎
  8. 日本展示学会『展示学65』(東京国立近代美術館「プレイバック『抽象と幻想』展(1953-1954)」) ↩︎
  9. 総務省平成27年版白書「広告手段としてのインターネットの普及」(総務省公式ホームページ) ↩︎
  10. Web of the Yearの一覧(Wikipedia) ↩︎
  11. Flyer TV(Wikipedia) ↩︎
  12. FNNスーパーニュース(Wikipedia) ↩︎
  13. 「銀河鉄道999」生放送で初実写ドラマ化! メーテル役は栗山千明(アニメ!アニメ!) ↩︎
  14. Rhythm & Hues Studios, Digital Domain ↩︎
  15. 独自のリップシンク技術を活用したオリジナル短編CGアニメーション『スペース・クッキー』を制作(アニメエキスポ東京招待上映作品) ↩︎
  16. 文化庁メディア芸術祭公式ホームページ ↩︎
  17. 超人気ミステリーを永作博美&藤原竜也&常盤貴子で初テレビドラマ化 東野圭吾3週連続スペシャル(シネマトゥデイ) ↩︎
  18. フジテレビBB向けコンテンツで新レーベル~企業スポンサードで事業化へ (映像新聞 2002年10月7日)
    フジテレビの3Dアニメ「A・F」(日本工業新聞 2003年8月25日) ↩︎